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映画「エレジー」をAmazon Primeで観る

2020年3月末の土日はコロナ対策として首都圏では外出自粛が行政から要請されています。シニアにとって自宅で過ごすことはそんなに苦にはなりませんが、そんな時は自宅に籠もって読書や映画、音楽などをじっくり楽しむのも悪くないですね。

私はAmazon Prime (いわゆるサブスクですね)の会員になって久しいのですが、最近の休みの日によく映画やドラマを観て過ごすことが多いです。もちろん、アマゾンで購入する際もすぐに商品が届くのでよく使ってますし、音楽などもたくさん楽しめて重宝しています。外出自粛などの非常時にはきっと大活躍することになりますね。

「エレジー」は老人の性を扱った興味深い作品

さて、映画「エレジー」です。老齢の大学教授と学生との恋の話なのですが、主人公の男性の性への執着と女性美への耽溺を軸に、老いていく男の性と生が赤裸々に表現されている点で深みのある作品になっています。

主人公の60代大学教授にベン・キングズレー、相手役の学生にペネロペ・クルス、主人公の20年来の愛人にパトリシア・クラークソン、主人公の友人で詩人にあのデニス・ホッパーが、そしてその妻をなんとデボラ・ハリーが演じています。2008年製作。監督はイザベル・コイシェという女性監督。原作はフィリップ・ロス「ダイング・アニマル」です。

会話は非常に簡潔で画像はいずれも美しいものです。そして、バッハやサティなどのピアノ曲が静溢に流れます。主人公の心情を吐露する語りが映画を進行していきますが、言葉や会話の一言一句がいずれも重く、同世代の男として共感する部分や考えさせられることが多いと思われます。

離婚歴がある主人公は文学を教える大学教授。結婚という仕組みを前向きに捉えておらず性に奔放な初老の男性です。文学以外にも演劇や美術などにも造詣が深く、自分の部屋にはセンスのいい絵や写真が飾ってあり、またピアノでバッハを弾いたり、アナログ写真の撮影と現像をしたりします。

冒頭の3分くらいでこの映画の主題が示されます。まず、TV出演のシーンで主人公は自身を「性的幸福」を追求する快楽主義者であることを明かし、次のシーンでは語りにて、ベティ・テイビスは「老年期は弱虫には不向きである」と言ったが、トルストイは「人生に老いて最大の驚きは老年期だ。老年期はそっと忍び寄りふと気が付くと、なぜ年相応に振る舞えない?なぜ私は人生において今もなお肉欲にこだわるのか?と人は自分に問いかける。なぜなら私の中では何も変わっていないから。」と。

結婚を「一生奴隷でいる約束」ととらえ、特定の愛人を持つだけでなく学生に手を出す60代大学教授。しかも、今回の女学生、つまりペネロペ・クルスは、ゴヤの名画「着衣のマハ」に似た美女であり、かつ主人公が理想とする美しい乳房を持つ。そんな素敵な女性と単なるセックスフレンドの一人でなくふつうに恋に落ちるという非常に恵まれた関係となる。

相手女性の男性関係に嫉妬して嫌われたり、一方で、相手が真剣になるや、30才以上の歳の差や老い先短い自身のことを理由にそれ以上に関係を発展させずに別れることになる。執着と弱気が相まって同情する部分もあるが、女性の気持ちを受け入れようとせず性と肉体美のみを求める姿勢は客観的に見てもあまりに利己的である。

何年かしてその相手の女性から会いたいと連絡があって乳癌で乳房切除の手術を受けると告げられる。さらに、彼女から自分の肉体を貴方ほど本当に愛してくれた男性は他にいなかったと告げられる。手術後に彼女から乳房が無くても愛せるかと問われて主人公は何も言わず寄り添うだけ。ラストシーンでは海岸を肩を抱き合った二人の背中が遠ざかっていくシーンで終わる。

結局、主人公はその女性とその後どうなるのだろうとの疑問が自然に湧いてくる。女性の純愛に触れてそれまでの性放蕩を会心したというのなら美談になるだろう。老いてもなお異性との関係性というものはいつまでも青少年のまま成長しないものなのか。女性を永遠に性の対象としか思えないのだろうか。

原作を読んでみないとなんとも言えないと思います。原作は作者フィリップ・ロスの考え方が明快に示されたもになっていると思われます。映画の監督は女性なので老いていく男性の複雑で厄介な性心理を十分に表現できなかった可能性があるようにも思えます。

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