男性はいつまで現役で性生活をエンジョイできるのだろう? これは多くの男性にとって重い問題であろうと思う。有名な将棋の棋士が前立腺癌を患って女性と交われなくなることを恐れて温存療法を選択したがその病が原因で夭折されてしまった話を聞いたことがあるが、確かに生死を掛けるに足るほどの大問題であるに違いないと思うのである。
数年前に、かかりつけの内科・泌尿器科が専門の医師に、その先生は70前後と思われるが、最近めっきり弱くなったように思うが普通は何才くらいまで現役でいられるのでしょうと聞いてみたことがあった。その先生が言うには、普通は65才くらいまでかな、60手前では早いようだが人によるでしょう、といったような回答であった。
最近では、ED薬が開発され、そのジェネリックも出回るようになって、誰にでも手軽にED薬を使うことができるようになった。そう言えば、最近の風俗店の昼間は老人が大挙して押し寄せているという話を何かで読んだ記憶がある。ED薬を使って若い時のような元気さで女性と交われるというのはやはり男性にとっては魅力のあることなのだろう。
ただし、当然ことながら問題はいくつかある。一つは、性欲の減退の問題である。男性ホルモンの分泌が老化と共に減じて来るのは避けられないことだ。魅力的な女性を見たり近くに接してもピンと来ないということだ。若い頃であれば到底耐えられれなかった欲求が不幸にも平然と受け流せるようになるのだろうと思う。
欲望がないのに薬で局部だけ元気にしたところで何が面白いのだろう。しかしながら本能というものは恐らくはそうした類推を遥かに超えた強靭な世界なのではないかと、いまだ老人の入口にいる私は思うのだった。
もう一つはフィジカル面の問題である。男女の営みが局所的な物理的接触が基本にある限りそれに耐えうる物理的な硬度が必要となる。そこのところはED薬が無理やりにでも対応してくれるが、その先の射精に問題があると思われる。
精子の生産能力が衰えて射精すべきものがない状態で、射精時の快感は得られるのであろうか。要するに快感の近くの問題である。精液の生産能力が衰えると共に射精がもちろんED薬を用いても勃起しなくなれば諦めもつくものの、勃起はしても射精できない、あるいは快感を伴わないという問題がある。
若い頃のようなドクドク感は精子自体の生産能力が著しく低下していては望むべくもないことだろう。しかしながら、子供の頃の自らの経験からすると、静液が生産されていない年代に自慰行為を覚えた我が身は静液がまったく出ない状態でも快感のあることを知っているのであった。
快感は精液の放出によるものでないことは明らかだが、その快感の強度も神経の老化と共に低減してきていることを実感する今日この頃である。また、射精時のオーガズム現象は一種の身体的反射=筋肉痙攣であり、それが老化によって起こらないということも想定する必要があろう。
いずれにしても本能である性欲が老化によって浸食されていくのを実感することは男として非常に悲しい現実に違いない。老化とは脳を含めたあらゆる身体機能が少しずつそれまでできていたことができなくなっていくことであり、それを仕方なしと諦めて受け止めていくことことが老人の心得と思われる。
ちなみに、前立腺癌は日本の男性の癌罹患の中で、2019年の統計予想では大腸、胃、肺に次いで4番目に延びているそうだ。医学の進歩とともにQOLに配慮した治療が確実に進んでいくはずであろう。私は男性なので男性のことしか分からないが、女性には女性特有の老化問題があるに違いない。