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老化とは その2

前回の「老化とは その1」では、テロメアという遺伝子の染色体の末端にある塩基配列の長さの話をさせていただきました。テロメアは、細胞分裂が起こるたびに短くなり、一定の長さになると細胞分裂が停止します。

テロメアは、染色体の末端に付いている保護キャップで、染色体の末端が「擦り切れない」ようにする作用があり、靴ひもの両端についているプラスチック製の覆い(アグレット)に例えられてきました。

テロメアは、赤ん坊より老人のほうが長さが短く、個人差はあるものの年齢に比例して短くなるという。従って、テロメアの長さは「細胞の老化度」を見るひとつの尺度にはなるということです。

最近では、テロメアの長さは血液中の白血球やリンパ球で調べることができるようです。そのテロメア検査では、自身の生物学的年齢が示され、細胞の老化を確認でき、病気のリスク対策ができます。人間ドックなどで調べることができる医療機関も増えているようです。

2009年のノーベル医学賞が「寿命のカギを握るテロメアとテロメラーゼ酵素の仕組みの発見」に与えられています。その後も老化や寿命に関する研究開発が非常に盛んに行われています。

テロメラーゼ

通常の体細胞とは異なりテロメアの短縮が起こらず、細胞分裂する能力が衰えない、つまり寿命のない細胞が存在します。癌細胞、生殖原細胞、胎児組織、血液幹細胞、腸管粘膜などがあります。

これらの細胞ではテロメラーゼという短縮したテロメアを修復する酵素が働いています。癌細胞では、テロメラーゼが働くために細胞分裂をいくら繰り返してもテロメアの短縮は起こらず、無限に増殖を繰り返します。

このテロメラーゼが細胞分裂の鍵を握るということから、癌などの病気の治療や老化や寿命に関わるアンチエイジング対策の面から注目されています。

治療面では、例えば、抗腫瘍薬の5-フルオロウラシル(5-FU)や抗AIDSウイルス薬のアジドチミジン(AZT)がテロメラーゼ活性を抑制することによって薬効を示すことが明らかにされています。

また、上記したテロメアとテロメラーゼの仕組みの解明でノーベル賞を受賞したブラックバーンらは2017年にテロメアと老化の関係について一般向けの本を出版しています。

それによると、瞑想など良好な精神状態がテロメラーゼを活性化したり、テロメアを伸ばしたり、あるいは、逆に精神的ストレスがテロメラーゼ活性を低下させたりするといった調査結果が示されています。

つまりは、生活習慣しだいでテロメアを伸ばし、健康寿命を延ばすことができるということが説かれています。加えて、健康長寿に効く運動、食事、睡眠についても言及されています。

どんな食生活をすればよいかという点については、野菜、魚、豆類、海藻、乳製品、全粒粉などがよく、赤肉、加工肉、精製された穀物などはよくないとされています。

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また、民間療法ですが、血液の幹細胞を用いたアンチエイジング療法が開発されています。幹細胞はテロメラーゼが働くことでテロメアが短くなることはないので、自身の幹細胞を身体外に取り出して培養して量を増やした後に身体に戻すというものです。

効果の程は定かではありませんが、美容関係ではこの種の施術がいろいろ出てきているようですね。寿命や老化に対する人間の欲望は非常に深いものがありますので、サイエンスの発展とそれに基づく技術イノベーションは今後ますます進んでいくことでしょう。

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