動脈硬化とは
癌以外の死因で最も多いのが循環器系、すなわち心臓や血管の不具合によるものです。その主な原因は血管の老化と言われる動脈硬化によるものです。
動脈硬化とは動脈の壁が厚くなったり、硬くなったりして本来の構造が壊れ、働きがわるくなる病変の総称です。
私たちの身体は、血管を通じて血液が糖分や酸素など生活に必要なものを運び込み、その一方で、炭酸ガスや体内でできた老廃物を運び出して処理する仕組みになっています。
血管は非常に重要な役割を担っています。その血管が詰まったり、破れたりすると重篤な事態になりますね。心筋梗塞などの心疾患や脳梗塞などの脳血管疾患は動脈硬化が原因とされています。
動脈硬化の危険因子
動脈硬化の危険因子は、高血圧、高脂血症、喫煙、肥満、糖尿病の5つと言われています。特に高血圧、高脂血症、喫煙の3つはより危険な因子となるようです。いずれも生活習慣に大きく依存します。
高血圧
血圧が高い状態が続くと血管は脆くなっていきます。同時に強い圧力がかかるために血管の壁が傷つきやすくなり、そこからコレステロールなどが入り込んで、血管の内腔を狭めていきます。
血圧を下げる薬は飲み始めると一生飲み続けることになるのですが、動脈硬化を進ませないという観点では血圧を低めに維持することは動脈硬化の良き対策になります。
ちなみに、収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上になると動脈硬化は進み易くなるようです。
高脂血症
悪玉コレステロールや中性脂肪が増えると動脈硬化が進みます。善玉コレステロールの増加は逆に動脈硬化を抑制するようです。過剰なコレステロールや中性脂肪は血管の壁(内膜)に取り込まれ、血管の内側に向かって盛り上がってきます。
この血管への脂肪沈着は、20〜30歳頃から始まり、50~60歳になると血管自体が狭くなってしまいます。
高脂血症でなくてもコレステロールや中性脂肪の高めなら、食事や運動など、日常生活の習慣を見直すことで改善できると思われます。
喫煙
喫煙は、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患の発症を促す強力因子です。1日20本以上の喫煙者では、虚血性心臓病の発生が50~60%も高くなるとのことです。
また、喫煙は、総コレステロール値、悪玉コレステロール値を高め、逆に善玉コレステロール値を下げますから、二重のリスクをもたらすのです。
動脈硬化の進行度をチェックするには
動脈硬化はサイレントキラーと言われており、自覚症状がないので、進行度を把握するには検査や診断が必要になってきます。男性の場合は、動脈硬化が進むとEDやEHS(硬度指標)低下などを招くと言われますので、ある程度は自覚することができるようです。
血液検査
血液中のコレステロールと中性脂肪は動脈硬化の重要因子です。それらは血液検査で簡単に調べられます。総コレステロール≧220mg/dL、LDL(悪玉)コレステロール≧140mg/dL、トリグリセリド≧150mg/dLなど一つでも引っかかれば注意した方がよいです。
また、悪玉と善玉のコレステロール比(LH比)、すなわち、LDL(悪玉)コレステロール値をHDL(善玉)コレステロール値で割った数値が、1.5未満であれば正常で、1.5を超えると動脈硬化が進み易い状態になっているという危険信号となるようです。
眼底検査
眼底検査は、目の網膜の状態を調べることができる検査です。目の網膜を映して、動脈を直接見ることができるので、動脈硬化の診断として活用されています。
超音波検査
超音波検査では動脈硬化を検査する時は首の皮膚から近いところにある頚動脈に超音波を当てて血管を見ます。動脈硬化が進んでいると、血管壁が山のように盛り上がっていたり、動脈が狭くなっている様子が確認できます。
頚動脈で動脈硬化が起きている場合は、大動脈や心臓の冠動脈でも動脈硬化が起きていると考えられます。
ABI検査
ABI検査は人間ドックなどでも項目として挙がっている場合がよくあリます。足首と上腕の血圧を測り、その血圧を比べる検査です。具体的には、足首の上の血圧の高い方を腕の血圧の高い方で割って調べます。1以下になる場合は、閉塞性動脈硬化症という病気である可能性があり、動脈硬化が進んでいると考えられます。
PWV検査
PWV検査は、血管の硬さを調べる検査で、脈波伝播速度検査(みゃくはでんぱそくどけんさ)とも言われます。心臓の拍動の衝撃、つまり脈が、どのくらいの速さで足首まで伝わるかを測定します。
健康な軟らかい血管では脈がゆっくりと伝わり、動脈硬化が進んだ硬い血管では脈が速く伝わります。この検査によって血管の老化がどれくらい進んでいるのかを示す血管年齢を割り出すことができます。
FMD検査
FMD検査はこの内皮細胞の機能が正常かどうかを調べる検査です。検査方法は、安静時の血管の直径を測定後、腕の動脈を圧迫して、5分程度血流を止めたあと、圧迫を解除して血流を再開したときの血管の直径の変化を超音波で測定します。